改正JISのキーワードは、次の三つです。

  1. 国際協調
  2. 非技術依存
  3. テスタビリティ

それぞれのキーワードについて、ここから考えていきたいと思います。

規格票の閲覧・購入

閲覧JISC(日本工業標準調査会)
「X8341-3」で検索してください。

購入JSA Web Store
同じく「X8341-3」で検索してください。

規格票は入手したが、とっつきにくいという方は、まずWAICの「JIS X 8341-3:2010 解説」を一読され、全体像をざっくりと把握しておくことをおすすめします。

規格票の構成

目次は以下のとおりです。

以上、計62ページ。附属書と解説をのぞくと、規格票そのものは実質33ページしかありません。このなかでウェブコンテンツ制作者がもっとも注目すべきは、箇条4、7、8の合計22ページ。この三つだけでもざっと目通しすることをおすすめします。それぞれの内容は以下のとおり。

箇条4「ウェブアクセシビリティの達成等級」

改正JISでは、アクセシビリティの適合の程度を、「ウェブコンテンツのアクセシビリティ達成等級」と規定しており、以下の三つにわかれます。それぞれの等級が具体的にどんな達成基準(2004年度版の「個別要件」)を満たせばよいのかをリストアップしているのがこの箇条4です。

  1. 等級AAA(トリプルエー・達成基準数61)上級(以下、例えとして)
  2. 等級AA(ダブルエー・達成基準数38)中級
  3. 等級A(シングルエー・達成基準数25)初級

今後われわれが目標とすべき等級について、渡辺さんによれば「AAが目標。Aはあくまで最低限のレベル」。「AAA適合は推奨しない」(植木さん)。

箇条7「ウェブコンテンツに関する要件」

箇条7=WCAG2.0
箇条4で等級別にリストアップされていた達成基準(個別要件)をひとつずつ規定しているのが箇条7で、本規格のコアともいえる重要な部分です。なぜなら箇条7は細分に到るまでWCAG2.0ガイドラインと合致しているからです。もっと具体的にいうと、細分箇条7.1.1.1の「7」をとると、そのままWCAGと番号まで一致しています。ちなみに箇条4の「達成等級」もWCAGの「レベル」を置き換えたもので、実質的にはおなじものです。詳しくは附属書B「WCAG2.0との整合性」を参照してください

箇条7の構成自体も当然ながらWCAGと以下のように合致しています。四つの原則の下には、総計12のガイドラインが配置(7.1.1, 7.1.2…)されており、ガイドラインの下には、 さらに達成基準が並ぶ(7.1.1.1 …)という3階層になっています。

四つの原則と12のガイドライン(カッコ内の数字は達成基準数)

  • 7.1:知覚可能に関する原則
    • 7.1.1 :代替テキストに関するガイドライン(1)
    • 7.1.2:時間の経過に伴って変化するメディアに関するガイドライン(9)
    • 7.1.3:適応可能に関するガイドライン(3)
    • 7.1.4:識別可能に関するガイドライン(9)
  • 7.2:操作可能に関する原則
    • 7.2.1:キーボード操作可能にに関するガイドライン(3)
    • 7.2.2:十分な時間に関するガイドライン(5)
    • 7.2.3:発作の防止に関するガイドライン(2)
    • 7.2.4:ナビゲーション可能に関するガイドライン(10)
  • 7.3:理解可能に関する原則
    • 7.3.1:読みやすさに関するガイドライン(6)
    • 7.3.2:予測可能に関するガイドライン(5)
    • 7.3.3:入力支援に関するガイドライン(6)
  • 7.4:頑健性(ロバスト)に関する原則
    • 7.4.1:互換性に関するガイドライン(2)

達成基準の総数:22+20+17+2=61

国際協調
このように改正JISがWCAGと合致しているのは、何もそっくりそのまま頂戴したからではなく、逆にWCAG2.0がJIS2004年度版の成果を取込んだという経緯によるものです。この事実はわれわれウェブコンテンツ制作者にとって大変な福音となるでしょう。なぜなら、2010年版に適合すると、自動的にWCAG2.0適合となるため、複数の規格を配慮する手間が今後なくなるからです。もうひとつ、たとえばCSSハックのように、国内外の制作者が問題意識を共有し、知恵を分かち合い、実装テクニックを共有(ライブラリ化)するためのフレームが整ったことにもなります。これが一つめのキーワード、「国際協調」の利点です。

非技術依存
ウェブコンテンツ制作者は、各等級が要求する実装テクニックを求められることになるのですが、改正JISはこれらの具体的な実装例についてはあえて何も書いていません。具体例、図版ともに豊富であった2004年度版と比較すると、今回の改正版はひたすら文字ばかりで、実に色気のない印象を受けるでしょう。これが二つ目のキーワード「非技術依存」と関係があります。

簡単にいうと、ウェブコンテンツ制作者は、達成基準さえ満たしていれば、HTML,PDF,FLASH,Javascript、もしくはその他のどんなウェブコンテンンツ技術を用いても(ユーザ側が利用可能な技術であれば)いいということです。目的さえ達成できていれば、手段は問わないというわけです。「代替コンテンツは最後の手段」(梅垣さん)。

このように、2010年度版は規格そのものが技術の発展に翻弄されないよう、あえて技術とは距離をおいた形で策定されているのです。

次回は、三つ目のキーワード「テスタビリティ」と箇条8について考えてみたいとおもいます。